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Traffi-Cationトップページ > Traffi-Cation 2019 夏号(No.51)

【人、クルマ、そして夢。 第20回】交通コメンテーター 西村 直人

先進安全技術を実装した国産初の連節バス

 日本の経済を下支えする路線バス。全国で年間41億人以上もの乗客に利用されています。現在、統計上の路線バス乗客数は減少傾向にありますが、逆に一部の都市部では人口集中により増加傾向にあります。今回紹介する連節バスは、そうした都市部での大量輸送を目的に開発された車両です。

 日本では1985年に開催された科学万博「つくば85」において100台の連節バスが初めて導入され、1998年には千葉県幕張市を走る路線バス区間に連節バスが導入され現在に至っています。現在走行している連節バスは通常の大型路線バスと比べて1.5倍(約80名→約120名)の輸送力があり、乗務員不足の解消にも一定の効果がみられるものの、これまで導入には高いハードルがありました。

 そこには、走行できる道路に制限があることや、道路運送車両法における保安基準の緩和認定が必要であること。国産メーカーは連節バスを製造していないため事業者自らが輸入するなど手間がかかること。加えて、必要な整備部品もすべて輸入しなければならず、導入コストのほか運用コストも高くつくなど複数の課題があったのです。

 2014年3月、国土交通省・自動車局は「連節バス導入ガイドラインver.1」を策定。それを受け、国内商用車メーカーが連節バスの開発に着手することになりました。今回紹介する連節バスは2019年5月に発売された国産初の車両で、製造は日野自動車といすゞ自動車の折半出資会社である「ジェイ・バス」が担当します。

画像① 連節バスとは道路運送車両法によると、「連節部により結合された2つの堅ろうな車室で構成され、車体が屈折する特殊な構造を有し、前車室と後車室の連結及び切り離しが路上等作業設備のない場所で行えない構造の自動車~」(中略)とある。つまり、「前後車両の切り離しができない状態で走るバス」を示す。なお、連節バスでの旅客運送には大型第二種免許が必要だが、けん引免許は条件ではない。しかし後退時には、けん引車両の特有の折れ曲がる特性を熟知している必要がある

 連節バスのボディサイズは全長17990×全幅2495×全高3260(㎜)と、これまでの大型路線バスと比べて全長で約7m長くなっています。前車両には前/中軸が、後車両には後軸が設けられ、前後車両は「連節器」によって結合されています。3軸の主要部品と連節器はいずれも海外メーカー製ながら国内製造のバスと同じ整備性が確保されているとのことです。

 前車両の前軸はステアリング操舵を担当し中軸は固定。直列6気筒直噴エンジン(8,866ccでハイブリッドシステムとの組み合わせ)は後車両の最後部に搭載され、7速のAMT(クラッチ操作の要らないシングルクラッチ方式トランスミッション)を介し後車両の後軸を駆動します。

 この連節バスは、国産車ならではの先進安全技術である「プラットフォーム正着制御」、「協調型車間距離維持支援システム」、「公共車両優先システム」、「死角支援システム」を実装しています。このうち注目はプラットフォーム正着制御です。

 これは道路に敷設した(道路標示のように描かれた)専用誘導線を車載カメラで認識して、ブレーキ/ステアリングを自動で制御し目標の位置にピタリ(バス停に設けられたプラットフォームとのすき間は45㎜±15㎜)と停車させる技術(詳細は画像②)です。専用誘導線を正しく認識している限り、SAEにおける自動化レベル2相当の運転操作が実現します。ちなみに車両価格は88,000,000円(税抜き)と、ハイブリッドシステムを搭載した大型路線バスの3倍ほど高くなっています。


画像② バス停に設けられたプラットフォームに停車させるプラットフォーム正着制御のシステム概要。車両後方から左側方にかけてすり抜けようと接近する二輪車や自転車がいる場合には、死角支援システムにより警報ブザーなどで報知され、ドライバーに運転操作の権限が戻される

画像③ 乗車定員は一般的な路線バスの1.5倍にあたる119名(仕様により変更可)を確保し、大量輸送に対応。車内レイアウトは一般的な路線バス同等でバリアフリーや快適性も確保。一般的な対面シートでは膝前の空間が500mm程度だが、今回の連節バスでは685mm確保しているため、ゆとりある出入り性と着座性を両立  


にしむら なおと
1972年 東京生まれ。交通コメンテーター。得意ジャンルは自動車メーカーのロボット技術、人間主体のITS、歩行者・二輪車・四輪車との共存社会、環境連動型の物流社会、サーキット走行(二輪・四輪)。近年は大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」のメンバーや、東京都交通局のバスモニター役も務めた。(一財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会指導員。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。2019-2020日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。


 

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