Activities

Traffi-Cationトップページ > Traffi-Cation 2019 夏号(No.51)

【特集】キーワード:物流・労働力不足・新技術

“ドローン配送”はドライバー不足解消の切り札となるか

 運送業界のドライバー不足は近年深刻さを増しています。この問題解決のための早急な対応が求められており、現在さまざまな新しい試みが検討されています。

 そうした取り組みの中で注目されている手段のひとつに、ドローンによる荷物配送があります。

 日本政府もドローン活用には期待を寄せており、制度の見直しを含めた環境整備の検討を進めています。

 昨年11月、福島県の2つの郵便局間で、目視外飛行・補助者なしによるドローンを使った荷物の輸送が行われました。その結果、ドローンがドライバーの代わりとして配送することに期待は大きいものの、その活用・普及について、現状では実用化に向けた課題があることもわかりました。

運送業界のドライバー不足の現状

ドライバー不足の要因

 日本国内の自動車による貨物輸送の分担率は、トン(重量)ベースでは90%超、トンキロ(重量×距離)ベースではおよそ50%を占めており、自動車運送業は国民の生活や経済活動に欠かせない重要な産業です。

 しかし自動車運送業界は慢性的なドライバー不足に陥っています。トラックドライバーの有効求人倍率※1は2.73倍と全職業の1.46倍を大きく上回っています(2018年8月現在)。

※1 有効求人倍率:求職者1人に対してどれだけの求人数があるかを示す指標(有効求人数÷有効求職者数)。1を下回れば仕事不足、上回れば人手不足。

 この要因としては、インターネット通販の拡大によって生じた以下の問題があげられます。

  • 少量多品種の小口荷物増加による仕事量の増加(図1)
  • 全取り扱いの2割に当たると言われる不在再配達
  • 即日配送や細かな時間指定など煩雑な作業

<図1 宅配便の取り扱い個数推移 (1992年〜5年毎)>

出典:国土交通省

 こうした仕事量の増加が、それを処理するための人手を不足させているのです。また、このことによるドライバーの長時間労働という問題も起きています。

 国土交通省では、ドライバーの拘束時間や休日労働については、1件でも違反が確認された場合、即時に車両の使用を停止させるなどの厳罰化を図っています。しかし、仕事量が増えている状況の下、労働時間を減らしてしまうと人手不足が加速されるのではないかという懸念もあります。

 加えて、少子化やクルマ離れにより、若年層の働き手が減少していることもドライバー不足に拍車をかけています。

人手不足解消に向けた取り組み事例

現状の取り組み、これからに向けた試み

 次に掲げる事例(表1)は「物流に人の手間をかけず、効率的に対応する」ことをめざして取り組まれているものです。

 例えばドライバー不足解消と地域公共交通の存続を狙いとした貨客混載のバス・タクシー、効率化とコスト削減を狙いとした共同配送など、すでに稼働しているシステムがあります。また、将来に向けて自動運転車やロボットを活用しようと実証実験を行っている取り組みもあります。

 しかしながら、現在の物量増加に伴うドライバー不足の解決策としては十分ではありません。そこで、以下のようなドローンの強みを活かした配送が注目され、さまざまな動きがスタートしています。

  • 少量の配送に対応できる
  • 空間利用により、配送時間が短縮できる
  • 運送用機器として自動運転車やロボットと比較して、技術的なハードルが低く、導入コストも抑えられる

<表1 人手不足解消に向けた取り組み例 >

 
項目
内容
メリット
デメリット









貨客混載バス
*Traffi-Cation 47号『春』
(‘18年3月発行)特集掲載

路線バスの客席の一部を貨物積載スペースとして乗客と貨物を混載し、物流ドライバーの人手不足解消と路線バスの存続を図る
【例:長野県飯綱町/長電バス、ヤマト運輸】

  • バスの運賃収入が増加する(バス路線の存続)
  • 貨物事業者は効率的配送ができる
  • 運行本数やルート設定に制約があり、利便性が低い
タクシーによる宅配

過疎地に限り貨物輸送が可能
空いているタクシーを人手不足の貨物配送に活用しようとする試み
【例:京都府/山城ヤサカ交通、佐川急便】

  • タクシーの空車率増加および利用者、収入減少に歯止め
  • 宅配ドライバーが不足している(需要が多い)都市部は対象外
自動運転車による宅配
(実証実験)

ドライバーは荷物の受け渡しに関与せず、利用者自身が到着した車両でスマホを使った認証を行ってからボックスから取り出すサービス
【例:神奈川県藤沢市、DeNA、ヤマト運輸】

  • 受取場所や受取時間を細かく指定できる
    (10分刻み)
  • 道路上の混合交通における安全性確保に課題がある
  • 輸送用機器としての技的課題が多い
  • 導入時のコストが高
配送ロボットでの配送
(実証実験)

自動運転技術を応用した配送ロボット(無人)による配送。実証実験では最大時速6kmで自動走行
また遠隔監視とともに、必要に応じて遠隔操作にも対応する
【例:福島県南相馬市、浪江町/日本郵便、
   東北日立、ZMP、DFA】

  • 物流のラストワンマイル※2の課題解決




同業種間の共同配送

ビール大手4社は、JR札幌貨物ターミナル駅構内の倉庫を共同拠点(無在庫型)として活用。4社の荷物を集約し、届け先別に仕分け後、混載して配送
【例:北海道道東/アサヒ、キリン、
   サッポロ、サントリー、日本酒類販売】

  • 配送の効率化、物流コスト削減に寄与
  • 環境負荷の軽減
  • 大量の荷物を集積させる配送センターが必要
  • 立地条件によってはコスト高になる
異業種間の共同配送

関東〜中部の間で、異業種間では国内初となるトラックの中継輸送を行う。静岡県内の中継地点で積み荷を交換し、受け取った積み荷を相手企業の配送先へ輸送する

【例:関東〜中部/イオン、花王】
  • 決まったルートで配送されるため納品時間が安定する
  • コストが割安
  • CO2排出量の削減
  • 運行時間のフレキシビリティが少ない
  • 時間指定等には対応しにくい

※2 物流においては、最終拠点から顧客へ商品を届ける最後の区間のこと
出典:各種報道、情報をもとに作成 (ここに掲げてあるのは取り組みの一部です)

 

 まずは日本における現状のドローンの位置づけを見ていきます。

政府によるドローンの活用方針…『物流革命の実現』

 政府は、人手不足が深刻化している物流分野への対応のひとつとして「小型無人機(ドローン)による荷物配送など産業利用を拡大していく」としています(『未来都市戦略2017』)。また翌年の『空の産業革命に向けたロードマップ2018』では、物流に関して次のように記されています。

  • 2018年度:離島や山間部等における荷物配送
  • 2019年度:都市部における荷物配送の実証実験
  • 2020年代※3:都市を含む地域における荷物配送
    ※3 2020年代の具体的な指針:補助者を配置しない目視外飛行や、第三者上空飛行など高度な飛行を可能とするための技術開発と制度的対応を進める

 このロードマップに沿った展開を図るためには、法・制度の再検討、技術開発、飛行に関わる既存インフラなど、多岐にわたる環境整備ポイントの点検が必要です。

急激に伸びている日本国内のドローン活用ビジネス

 ドローン関連ビジネスも、日本の国内市場においてはその規模が拡大しています。
 2016年度は353億円とされていた市場規模が2024年度には5,073億円と、8年で14.4倍に達すると予測されています(『ドローンビジネス調査報告書2019』株式会社インプレス)。

 すでに農業(農薬散布)、土木測量、検査(ソーラーパネルの点検整備)などの分野では市場を確立しており、災害調査においても公共だけでなく損害保険会社の損害査定での活用も始まっています。

 物流分野では、過疎地域での活用をはじめ宅配などへの活用が期待されており、今後の市場拡大が見込まれています。ただし、その可能性は非常に高いものの法規制、システム、インフラなどがどの程度、緩和・整備されるかによって市場規模拡大は大きく影響されます。

 

ページ


NO.51号その他のコンテンツ
【交通安全Topics】
イヤホンをつけて“ながら運転”の自転車 
人をはねていなくても「ひき逃げ」で書類送検
被害者と直接の接触がないのに「ひき逃げ」で書類送検された自転車の男性。なぜ罪に問われたのか。事故の状況と悪質性。自転車通学生なら知っておくべき事故を誘発した際に取るべき行動。

【海外交通事情報告 第51回】
普及率世界一 ノルウェーの電気自動車導入促進策
電気自動車保有率世界ナンバー1の国ノルウェー。いち早く着手してきた環境対策と、「購入」「所有」「使用」の各場面における手厚いインセンティブ、利用しやすい環境整備等について「ノルウェー電気自動車協会」を取材。

【人、クルマ、そして夢。 第20回】交通コメンテーター 西村直人
先進安全技術の普及は3つの柱
2019年5月に発売された国産初の連接バス。国産車ならではの先進安全技術を実装。注目は、プラットフォーム(乗降場所)の目標位置にピタリと停車させる「プラットフォーム正着制御」。