Traffi-Cationトップページ > Traffi-Cation 2019 秋号(No.52) | ||||||||||||||||||||
【特集】高齢者の“自ら移動する自由”確保のために |
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高齢者の移動手段としての一人乗り電動カート 現状における電動の車いす 電動車いすの出荷台数は年間およそ2〜3万台程度で(図3)、2000年をピークに伸び悩んでいます。電動車いすの抱える課題は、モビリティとしての機能が十分ではなく、免許返納者の受け皿とはなり得ていないところにあるのではないでしょうか。 図3 電動車いすの出荷台数推移 出典:電動車いす安全普及協会 電動車いすやシニアカーは、もちろん免許不要ですが、道路交通法上、歩行者扱いになり歩道しか走れず、最高速度は6km/hを超えないこととされています。また、日本の歩道は段差や傾斜など走りづらいといった道路構造上の問題があります。 まずこのように、車道を走ることができずスピードが出せないことで“自由な移動”が満たせないという点が最大の課題ではないでしょうか。 さらには車いすやシニアカーに対する周囲の理解不足、本人自身の「年寄りだと思われたくない」といった気持ちも、活用を阻害していると考えられます。 こうした、法や道路構造、精神的な課題も含めた解決をめざして、新たなモビリティの開発を進めている会社があります。 新たなモビリティの開発 時にはロボット、時にはモビリティ、時には車いす 株式会社テムザック(本社・福岡県宗像市)は、サービスロボットの開発・製造・販売を手がけている会社です。 さまざまなロボットを開発する中で、高齢者や障害のある人たちの移動能力を補助するために、ロボット技術を活用した研究も行っています。 同社で現在製品化されているのは、斬新なアイディアと技術が込められた「ロデム(RODEM)」という製品です。 このロデムについて、テムザック代表の髙本陽一さんに、京都にある同社の中央研究所でお話を伺いました。 ロデムは当初、病院や介護現場での活用を検討していましたが、幅広いユーザーにも利用できるように開発されました。その目標として「乗って楽しく、街へ出たくなり、健康な人も乗りたくなる乗り物」ということをあげていたそうです。このため以下のような特長を持っています。
また、従来の電動車いすの対象層とは異なる層の新たなニーズをとらえ、市場の拡大を考えて次の機能も備えています。
このような機能を備えたロデムは、免許を返納した高齢者や観光客などの新しい街乗りのモビリティとしての可能性が見えてきます。 新たなモビリティとしてのサービス実用化に向けた実験 日本国内における最初の実証実験は2018年7月、観光地京都・嵐山で観光客に対して、無料で貸し出される形で行われました(写真⑤)。 続いて、2019 年3 月、東京・丸の内エリアで、動画や音声対話による丸の内の名建築や歴史紹介といった観光情報にアクセスしながら回遊してもらう実験を実施しました。
それぞれの実験で、街乗りの市場性を検討するため、試乗された人に対して行ったアンケートの結果は次のようなものでした。
この結果を踏まえ、今後は操作性や乗り心地、車輪の改良等を行いつつ、途中で乗り捨てても自動運転で充電スポットまで戻る「オートリターン(自動運転)」の実現もめざしています。 ただ、髙本代表は現状で越えられない壁があるとおっしゃっています。法律で定められている速度の問題です。 現状においては、これまでにない新しいものや技術に対して、法整備が追いついていないのです。 テムザックでは、いま京都市とともに国家戦略特区「パーソナルモビリティ特区」を申請しています。その内容は次の通りです。
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