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Traffi-Cationトップページ > Traffi-Cation 2019 秋号(No.52)

【特集】高齢者の“自ら移動する自由”確保のために

新しいパーソナルモビリティ実現の可能性

免許返納者の移動手段として活用するために

 普通免許を返納した高齢者の新たなパーソナルモビリティとして、このような一人乗り電動カートを活用できるようにするためには、製品機能のさらなる向上はもちろん、道路インフラ等の整備、そして法整備が必要です。

 自動車でもない自転車でもないモビリティは、どのような位置づけにし、どのように走行空間を確保するのが良いのでしょう。

 当財団の視察から海外の事例をみてみると、超小型モビリティ(ミニカー)が自転車レーンを走行できるようにしているところがあります(写真⑦:オランダ・アムステルダム)。
 このように、例えば超小型モビリティや一人乗り電動カートを20〜30km/h程度の中速モビリティと位置づけて走行ゾーンを確保することが考えられます。

 また、着脱式の電動車いすに乗っていた女性に出会ったこともあります(写真⑧:スイス・モントルー)。車道を走るときはオートバイ並みのスピードで走行でき、ハンドル部分を切り離すと普通の車いすになって歩道を通行します。
 この女性は、自由な移動を可能にしてくれるこの電動車いすを自慢していました。

写真⑦ 自転車レーンを走行するミニカー
写真⑧ 前部を外すと普通の車いすになる

 

一人乗り電動カートを活用するための考え方

 進化した一人乗り電動カートの機能を十分に活かして高齢者の移動に寄与するためには、いくつかの検討すべき項目があります(表2)。

表2 電動車いすの現状と一人乗り電動カートに求められる視点

 
法律
通勤インフラ
電動車いす(現状)
【道路交通法】
・走行は歩道のみ
・時速6km/h
・走行困難歩道の存在(狭い、段差がある)
・歩道の整備、拡幅が必要
一人乗り電動カート(次世代型)
【道路交通法】【道路運送車両法】
・歩道も車道も走行可の区分領域新設
・歩道は6km/hに、車道は20〜30km/hに
・歩道の整備、拡幅が必要
・車両における走行空間の確保
(中速域モビリティの走行空間)


 まず法律的には、歩道も車道も走れるように制度改正を行う必要があります。

 道路インフラ面では、歩道を整備すること、また、一人乗り電動カートが走れる十分な拡幅が必要です。これは、既存の電動車いすの場合でも同じ状況です。

 車道においては、20〜30km/hで走行する中速域のモビリティのための走行空間が必要です。
 これにはバス専用レーンや自転車レーンを利用することも考えられます。

 高齢者の移動手段として求められるのは、自らの力で街を楽しく移動できることであり、それは生活の質の向上にもつながります。
 高齢者がどんどん街へ出ていくことができる環境づくりを、真剣に検討すべきではないでしょうか。

議論のために

 運転免許を返納した高齢者や高校生を含めた免許を持たない人が、歩道も車道も走れる一人乗り電動カートに乗れるようになったら、そうしたモビリティにはどのような機能が求められるでしょうか。また、歩行者と共に歩道を共用するにあたってどのような条件整備が必要となるでしょうか。
 これらについて生徒の皆さんがどのように考えるか、議論をしてはいかがでしょう。

 

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