1.講演 「自転車を取り巻くリスクとその責任」
今回の講演は、財団の講師派遣事業で実際に生徒を対象に行っている交通安全の講演テーマを指導者の立場として基本から深く理解してもらうことを主眼に置いたものである。
講演の内容は、①自転車事故の発生状況、②自転車事故が起こりやすい事例③自転車の交通ルール、④自転車事故で問われる責任と備え、の4点を中心に解説された。具体的には、①自転車事故を自己類別でみると、出会い頭衝突が全体の半数以上(約52%)を占め、相手当事者別でみると、対自動車との事故が全体の約85%を占める。②事例としては、安全不確認、一時不停止、信号無視、歩道上での歩行者との接触が多く、スマホを見ながらの事故も増えている。③交通ルールについては、自転車は軽車両で車道走行が原則。交通ルールも自動車と同じ扱いになる。④自転車も加害者になれば、高額の賠償義務を負うことになる。そのための対策として賠償責任保険がある。など、資料に基づき、豊富なデータと事故事例を用いてわかりやすく解説された。
参加者からは、「自転車走行の基本的遵守事項を理解できてよかった」「加害者として問われる責任の内容を理解することができた」「大変わかりやすい資料なので学校で是非活用させていただきます」などの声が寄せられた。
2. 講演 「自転車利用環境の現状と課題」
講演は、日本の交通政策について、日本にしか見られない矛盾点を豊富な画像で具体的に示し、欧州との比較を行いながら、わかりやすくユーモアを交えながら解説された。解説のポイントは以下のとおり。
日本では、自転車事故の70%が交差点内で起きており、操作ミスでなく認知ミスによるもの。自転車の歩道走行が当たり前になっているため、車から自転車が見えていないのが原因、世界(30%)と比較して突出している。欧米では歩道は歩行者のための道路であるとの意識が徹底、自転車が通行する場合は下車している。近年、日本でも自転車をあらためて軽車両と位置づけて車道走行を原則とし、自転車レーンの整備を行い始めたが、その距離はまだまだ不十分。道路標識も東京オリンピックを控えるが、国際的な標識の整備が遅れている。世界では、車が自転車を抜く場合1.5m離れる取り組みが始まり、日本では愛媛県が始めた。生徒達に交通ルールを教えるときは理由を明確に伝えなくてはいけない等。
参加者からは「国内のルールの矛盾を改めて感じた」「交差点での事故が減少しない理由が理解できてよかった」「自転車ヘルメットの着用率を向上させる参考になりました」「できれば生徒にも聞かせたい講演だった」などの声が寄せられた。