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Traffi-Cationトップページ > Traffi-Cation 2019 夏号(No.51)

【特集】“ドローン配送”はドライバー不足解消の切り札となるか

物流分野でのドローン活用事例

 日本において物流分野では実証実験を中心とした取り組みが行われている段階ですが、活用に向けた試みは活発化しています。

 海外をみると医薬品を中心に実用化されています(表2)。 

 このように、実用化されている海外でも荷物の内容や展開地域など用途が比較的限定されています。日本の規制は欧米主要国などと比較しても、飛行高度、飛行許可制、目視外飛行の原則禁止(条件付き)など大きな差はなく、日本だけが特に厳しい規制があるというわけではありません。

 とは言え、ドローン活用に向けたひとつのポイントはやはり規制の緩和です。

<表2 ドローン活用の動き>

企業名 展開地域 サービス内容
アマゾン
(Amazon Prime Air)
日本
注文を受けた商品(約2.3kgまで)を30分以内に利用者に届ける実証実験
楽天
日本
千葉市の国家戦略特区の枠組みを使い、同市内のマンションの玄関先まで荷物を運ぶ実証実験
埼玉県秩父市で、山間部の消費者がインターネット通販で商品を購入したと想定し、3km先の目的地まで運ぶ実証実験

ジップライン
(アメリカ合衆国のドローン配送企業)

ルワンダ
2016年、血液のドローン配送サービスを開始
Matter net
(アメリカ合衆国の物流企業)
スイスの都市圏
2017年以降、医療用品や血液サンプルを運ぶ
DHL
(ドイツの巨大物流企業)
タンザニア
2018年、ドローンによる医薬品の配送を開始
Flytrex
(イスラエルのドローン配送企業)
アイスランドの首都
レイキャビク
首都レイキャビク(国の人口の3分の2を占める)で、フードデリバリーサービスを展開

出典:各種報道、情報をもとに作成

ドローン活用に向けた日本国内における規制緩和

 2018年9月、国土交通省はドローンの飛行に関する許可・承認の審査要領の一部基準を改正しました。これまでドローンを見ずに操縦するためには、原則として補助者を配置して、ドローンを監視し、第三者の立ち入りがないこと等を確認しなければなりませんでした。

 それを今回の改正ではドローンの機体にカメラを設置して運行をチェックするなど、安全対策を施せば、補助者なしで目視外飛行ができることとしました。

 この改正審査要領に基づき日本で初めて承認を受けて、福島県の小高郵便局(南相馬市)と浪江郵便局(浪江町)の2つの郵便局間で、「目視外飛行・補助者なし」によるドローンを使った荷物の輸送が行われました。

 この取り組みについて、現地で実際に担当された日本郵便㈱の方にお話をうかがいました。

福島県の郵便局における実証実験

背景

 郵便事業は、一年中、郵便局からどんなに離れた家にも届けることが使命です。そこには個々の郵便局員の配達業務があり、その効率化が課題でした。

 こうした状況を踏まえ、2015年頃から日本郵便では輸配送の高度化をめざしてドローンをはじめとする新技術活用について検討していました。

 中でもドローンについては、政府の推進策や前述の規制緩和もあり、ドローンが作業の効率化に寄与するものであることを確認するため、荷物輸送を行うこととしました。

 この取り組みの主眼は、輸配送の時間短縮・効率化です。加えて安全性を含めてドローン運行のノウハウを蓄積すること、将来的に全国の山間地、離島等で配送を展開する可能性を検証することも狙いとしていました。

 そして社会に受け容れてもらうためのノウハウの蓄積も大事なことだったようです。
 

“社会的受容性”の獲得

 新技術の活用に当たって、最重要となるのは“社会的受容性”だと日本郵便の上田さんはおっしゃいます。

 「クルマや船、航空機など、従来のものだとそれほど大きな問題になりません。しかし新技術の場合は、安全性やプライバシーの侵害などいろいろあって、不安に思われてしまう可能性があるのです」

 そういう意味からも、自治体や住民への理解活動は特に丁寧に行ったそうです。

 「この地域は自治体としての受容度は高いものでした。小高と浪江の両郵便局がある地域は東日本大震災の原発事故の影響で帰還困難区域に指定されていたため、地域の復興が喫緊の課題です。また“福島イノベーションコースト構想”(福島県浜通り地域等に新たな産業の創出をめざす構想)によりロボット産業が推進されているからです。しかし、住んでいる方々から十分な理解を得るために飛行ルート下のすべての住民に手紙を渡し、丁寧な説明を行いました」

 社会的受容性を獲得するために日本郵便が行った対応は、主に次のようなものでした。

  • 自治体、道路管理者、警察、電力会社、鉄道会社への説明
  • 23区の区長への説明
  • 飛行経路下の住民に対する周知文書の配布
  • 飛行経路下への看板設置(52カ所・写真①)

 こうした活動が実を結び、最終的に住民を含む関係各所の賛意が得られることとなりました。
「事前に行ったこの対応はドローン配送普及に向けて最も重要なことだったと思っています」

写真① 飛行経路下52カ所に看板を立て、中止の日には飛行中止の
    マグネットを貼りつける作業を毎回人力で行っていた。

写真提供:日本郵便

取り組みの概要

 2018年11月7日午前9時過ぎ、ドローンを使った目視外飛行・補助なしの第一便が小高郵便局を飛び立ちました。

 ドローンは予定された9kmのルートを順調に飛び、かつては車で30分ほどかかっていたところを約15分で浪江郵便局の屋上に到着しました(写真②〜④)。

 

写真②
 郵便局上空を飛ぶドローン

写真③
 ドローンポートにピンポイントで着陸

写真④
 到着した荷物を取り出す
    写真提供:日本郵便

 

 搭載された荷物は、郵便局の業務用書類とパンフレット、地元の小学生が描いたドローンの絵、高校生と菓子店がコラボしたサブレで、重量は制限されていた2kg以内でした。

 移動中はドローンの機体に取りつけられたカメラで状況を確認します。ルートの途中には、ウエイポイント(地点情報)が20カ所以上設けられており、運行状況をGPSでチェックします。

 これを皮切りに毎月第2・第3週の火曜日〜木曜日、午前9時〜午後4時の間に1日最大3フライトの飛行が行われました(表3)。

<表3 実証実験の概要>
項目 実験の概要
飛行日 2018年11月7日以降の毎月第2・第3週/火曜日〜木曜日
飛行時間帯・回数 午前9時〜午後4時の間・1日最大3フライト
飛行区間(距離) 福島県 小高郵便局~浪江郵便局(9km)
積載物 2kg以内の荷物等
飛行速度 15m/s(約54km/h)以下
飛行高度 地面から60m以下
操縦者 実験時は1名
※天候や輸送する荷物の量、空域の調整等により、飛行日、時間及び回数はやむを得ず変更または休止する場合がある

出典:日本郵便資料より作成

 飛行ルートは、次のように設定されました(図2)。ただ、このルートの選定には苦労されたようです。
 

 “無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン”(国土交通省)によって、地上に公的施設や障害物がある場合には、十分な距離を保つ必要があるため、ルート決定には次のような注意が必要でした。

 「ドローンの利点のひとつは、直線的なルートで運行できることですが、今回の事例では、ご覧のようにジグザグにな っています。小高局から飛び立ったドローンが最初に曲がる箇所がありますが、ここは下に変電所があり、上空は避けなければなりません。また、もう一カ所で曲がっていますが、小高局から浪江局に行くにはJR常磐線を必ず跨がなければなりません。線路の上空も飛行を避けるべきです。この場所で曲がっているのは、ここにトンネルがあるからで、トンネルの上ならば問題はありません」

<図2 ドローンの飛行ルート>


(出典:日本郵便資料)

 

 

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